【地域】山村の限界集落と都市の限界集落

『限界集落と地域再生』 大野晃(著) 静岡新聞社 本書は「限界集落」という概念を提唱した論者による事例研究の書。 限界集落とは、本書の定義によれば 「65歳以上の高齢者が集落人口の50%を超え、 冠婚葬祭をはじめ田役、道役などの社会的共同生活の維持…

【都市】五山送り火問題を考える

陸前高田の松を京都の五山送り火で受け入れるか否かの騒動について考える。 陸前高田の松、一転受け入れ=送り火連合会、批判受け―京都(8月10日/時事通信) 東日本大震災の津波で流された岩手県陸前高田市の名勝「高田松原」の松を、 京都の伝統行事「五山…

【その他】議論に関する小考

【とかく議論が多い世の中】 仕事の会議、学校のゼミ、趣味の集まり、 結婚式二次会の打ち合わせ… あるいは、ブログやツイッターといった情報空間でのやりとり。 誰しも様々な場所で、様々な人と 意見を交わしあう機会があるでしょう。 また、そのような場を…

【都市】ある街の公園にて

本日、昼下がりの出来事。 僕は自転車でアルバイト先に向かっていました。 道中、尿意をもよおしたため、 ある公園の公衆便所に入ろうと考え、 公園の中に入っていきました。 公園には、砂場や遊具で遊ぶ三歳前後の子供たちと、 遠くの方で子供たちを見守り…

【都市】ニュータウンの住環境と高齢化

月雑誌『クーリエ・ジャポン』3月号に 朝鮮日報の記者による、千里ニュータウン関連の記事が掲載されています。 記事のなかで、記者が指摘しているのは以下の三点。 ①近年、千里ニュータウンにおいて人口減少、住民の高齢化が進んでいること。 (人口は全盛…

【労働】「正社員志向」はこれからも続くのだろうか

ゼミである方が発表されていた、障害者運動に関する研究について ぼんやり考えていたことを。 その研究では、障害者の「労働」はこれまで、 賃金を得るための労働か、 社会とのつながり=生きがいを得るための労働か という二分法による労働観に終始していた…

【読書記録】忘れられた日本人

忘れられた日本人 宮本常一(著) 岩波文庫 日本民俗学を代表する名著。 著者・宮本常一は生涯を通じて全国の農村・漁村・山村を歩いて回り、 文字を持たない人の口承・伝承を記録した「旅する民俗学者」と呼ばれています。 彼の出身地は、山口県の周防大島…

【読書記録】「女縁」を生きた女たち

「女縁」を生きた女たち 上野千鶴子(著) 岩波現代文庫 近頃、独居老人の孤独死、ワーキングプアなどの問題を射程にとらえた、 「無縁社会」という言葉が唱えられることが多くなっています。 新聞などのマスメディアも、「無縁社会」をテーマにした、 様々…

【読書記録】日本型ポピュリズム

ここのところ大阪府の橋下府政、名古屋市の河村市政に関する報道などで、 「ポピュリズム」という用語を耳にすることがあります。 とはいえよくわからないので、ゼミの先輩が参照されていた 『日本型ポピュリズム』(中公新書)という本を読んでみました。 日…

【読書記録】家族を容れるハコ 家族を超えるハコ

家族を容れるハコ 家族を超えるハコ 上野千鶴子(著) 平凡社 上野千鶴子さんといえば日本を代表するフェミニストですが、 近年はライフワークの女性・家族研究を軸に、 ナショナリズム研究、ネットワーク研究と仕事の幅を拡げていらっしゃいます。 また領域…

【地域】マクドナルドと地域社会

あけましておめでとうございます。 年明けらしくありませんが、今回はマクドナルドの話を。 マクドナルドに行くといつも思うことがあります。 それは、マクドナルドが地域社会のようすを非常によく 反映しているということ。 たとえば、私がよく行くマクドナ…

【地域】伝統仏教の衰退と上方落語の復興

先日、亡き祖母の四十九日法要がありました。 そこでの出来事から。 祖母の家は岐阜市の郊外にあるのですが、 当地域では葬儀・告別式こそ葬儀会社の会場を使うものの、 以降の法要は自宅に僧侶を招いてとりおこなう家庭が多いそうです。 わたしたちのケース…

【読書記録】希望難民ご一行様―ピースボートと「承認の共同体」幻想―

文体が軽妙で読みやすい。見習いたい… テーマは共同体論と若者論。社会学の得意分野です。 本稿ではピースボートの活動の様子には触れませんでしたが、 ルポタージュとしても楽しめます。 希望難民ご一行様―ピースボートと「承認の共同体」幻想― 古市憲寿・…

【読書記録】貧困の文化―メキシコの五つの家族―

人類学の古典です。 文庫で出版・邦訳されていますが、600ページ以上というボリューム、 主観や解釈を極力排しあらゆる情報を記述するというスタイルから あまり広くお勧めできる本ではありません。 とはいえ、メキシコ及びラテン文化、貧困問題に興味のある…

【読書記録】滝山コミューン一九七四

一人でも多くの方に読んで頂きたい本です。 滝山コミューン一九七四 原武史 講談社 コミューン(仏:commune) 「共通」「共同」「共有」「多数」「平凡」「庶民」の意。 新しい価値観、生き方を模索し共同生活を営む者による小規模な共同社会。 戦後の人口膨…

【読書記録】食の共同体―動員から連帯へ―

食の共同体―動員から連帯へ― 池上甲一/岩崎正弥/原山浩介/藤原辰史 ナカニシヤ出版 ひょんなことから「食育」に関する博士論文を講読する機会をいただき、 参考文献として手にした本です。 私はどちらかというと、「飯ぐらいは一人でゆっくりと食べたい」 と…

【読書記録】OLたちの―サラリーマンとOLのパワーゲーム―

OLたちのレジスタンス>―サラリーマンとOLのパワーゲーム― 小笠原祐子著 中公新書 レジスタンス(resistance)は一般的に「抵抗」という日本語に訳されますが、 社会学や人類学、政治学の分野において、このことばは「弱者の武器」という ニュアンスを付与され…

【読書記録】暴走族のエスノグラフィー−モードの反乱と文化の呪縛−

暴走族のエスノグラフィー―モードの叛乱と文化の呪縛 佐藤郁哉(著) 新曜社 エスノグラフィー第2弾、今回は「暴走族」です。 「暴走族」という言葉、私など大都市郊外の新興住宅地に身を置くものとしては、 遠い昔の話のように聞こえるのですが、 (私が小学…

【読書記録】アップタウン・キッズ−ニューヨーク・ハーレムの公営団地とストリート文化−

アップタウン・キッズ―ニューヨーク・ハーレムの公営団地とストリート文化 テリー・ウィリアムズ(著) ウィリアム・コーンブルム(著) 中村 寛 (翻訳) 大月書店 ニューヨーク・ハーレム。 またはアップタウン。 そしてプロジェクト(公営団地)。 これらの言葉…

【都市探訪】福島県会津若松市 〜会津武士道・白虎隊の社会学(その1)〜

黎明の宇都宮を発ち会津若松に向かいます。 黒磯駅で乗り換えなければならなかったのですが爆睡により華麗にスルー。 1時間待ちぼうけして、何事もなかったかのように後続列車に乗車。 郡山駅で磐越西線に乗り換え、会津若松駅に降り立ったときにはもうお昼…

【読書記録】集合住宅と日本人

集合住宅と日本人(平凡社:竹井隆人著) 概要 著者はマンション建て替えなどの「まちづくりの実務」に携わってきた政治学の研究者です。 「政治学者がまちづくりの何を?」「マンション建て替えは建築や工学の専門家が関わるのでは?」 と思われる方もいらっ…

【都市探訪】栃木県宇都宮市(その2) 〜地域社会の価値とは〜

【前回までのあらすじ】 宇都宮駅に着き、東口の公共交通について考え、ギョーザを食べました。 宇都宮駅西口です。 有名な「ギョーザ像」を尻目にころして、大通りをずんずん進みます。 中心市街地までは駅から徒歩10〜15分ぐらい、 アーケード街やパルコな…

【読書記録】居住の貧困

居住の貧困 (岩波新書:本間義人著) 賃貸住宅を探すとき、 「家賃がもう少し安ければ○○が出来るのに」「なんで初期費用だけでこんなにお金がかかるんだろう」 と思ったことのある方はいらっしゃるでしょうか。 また家族に恵まれ、しかるべき広さの住宅を探す…

【都市探訪】栃木県宇都宮市(その1) 〜都市の公共交通〜

前橋から宇都宮へ向かいます。JR両毛線と宇都宮線を乗り継ぎ、2時間とすこし。 どうやらその日は小山くんだりで花火大会があった様子で、 車両内は祭りの華やいだ雰囲気で満たされていました。そして子どもは窓をじっと見つめる。外真っ暗なのに。 宇都宮…

【都市探訪】群馬県前橋市 〜駅をはさんだ「攻防」〜

今回は群馬県前橋市です。 当初私は、工業集積地区であり、在日外国人が多く住むという点で、社会学的に注目を集める伊勢崎市・太田市を訪れる予定でしたが 自らの肉体と公共交通機関のみに頼る自分の旅行スタイルで、モータリゼーションの進んだこのような…

【都市探訪】埼玉県川越市 〜幻想とリアルの住みわけ〜

夏休みに北関東と福島の都市を訪れました。 今回の記事を皮切りに、その街の様子をご紹介していきます。 川越市は川越藩の城下町として繁栄し、「小江戸」と呼ばれる 歴史的資源の多く残る観光都市です。 2009年春のNHK連続テレビ小説「つばさ」の舞台と…

人権と国家 −世界の本質をめぐる考察

人権と国家 ―世界の本質をめぐる考察 (集英社新書) 概要 ラカン派精神分析理論の旗手と言われるスラヴォイ・ジジェクのインタビュー集+2本の論文です。 ジジェク氏の本は最近、新書としてもう1冊出ていて、気軽に読めますし、こちらもおすすめです。 (『ポ…

信仰心が薄れる「隠れキリシタンの里」【長崎:五島列島】

クーリエ・ジャポン10月号の「世界が見たNIPPON」という 特集に、五島列島(長崎県)に関するニューヨーク・タイムズの記事がとりあげられています。 五島列島は、鎖国時代のキリシタン迫害がら逃れた方々が、カトリックの信仰を 守り続けているというこ…

子どもの貧困−日本の不公平を考える

子どもの貧困−日本の不公平を考える 概要 日本社会において、これまで子どもの貧困(格差ではありません)は 「一億総中流幻想」「貧しくても幸せな家族幻想」に護られ十分に語られてきませんでした。 そして行政は国際的にみて、子どもの福祉については企業や…

ザ・フェミニズム

ザ・フェミニズム -概要 現代日本のフェミニズム史に名を残す2名の論者によって、2001年にリリースされた対談集です。 70年代以降の日本フェミニズムにおける論点の変遷が、 お2人のアプローチの違い、個性からなるかけあいから浮かび上がってきます。漫才の…