【都市探訪】埼玉県川越市 〜幻想とリアルの住みわけ〜

夏休みに北関東と福島の都市を訪れました。
今回の記事を皮切りに、その街の様子をご紹介していきます。



川越市川越藩の城下町として繁栄し、「小江戸」と呼ばれる
歴史的資源の多く残る観光都市です。
2009年春のNHK連続テレビ小説「つばさ」の舞台となった街ですので、
その特徴をご存じの方も多いのではないでしょうか。



一方で川越市は周辺に化学工場などが多く存在する工業都市であり、
30万超の消費を支える商業都市でもあります。
そんな多くの顔をもつ街の姿に迫ってみたいと思います。



※ウィキペディア様のデータはコチラ



歴史的町並みが多く残る地区(一番街付近)には、
中心駅である川越駅から徒歩で15分程度かかります。
その途中で、喜多院成田不動尊といった著名な寺院に出くわすことになります。





成田不動尊では蚤の市が開催されていました。
着物や陶器、掛け軸にレトロなおもちゃなど様々です。
(古いけど渋い虫かごが200円で売っていて、ゆらぎましたが結局スルーしました)
この日は酷暑といってもよい天候でしたが、にもかかわらずたいそうなにぎわいです。
周辺には仏具や古美術品を売る店も多く、このような品物のストックは
古都なだけに十分といえそうです。
またお客さんは観光客、周辺の街から買い出しに来た人、地元の人…
と様々な属性の方から成り立っているのでしょう。
売れるか売れないかはともかく、蚤の市が成り立つ素地はあるのかも…。





一番街の街並みです。地元商工会議所やNPOの努力もあり、
商家の蔵などが保全されていて、なるほど江戸時代の風情を残しているなと思います。
写真の「時の鐘」は街のシンボルになっています。
「時の鐘」は「日本の音百選」に選ばれているのですが、
その選定主体は環境省です。
まったく異議はないけど、どんな基準で選定されているのか気になる…



その後、一番街から離れ再び駅へと戻ります。
その途中の中央通りはかなりの渋滞です。
街のど真ん中に歴史地区があり、その他のメインストリートも昔の面影をとどめていて道幅が狭いので、市内の車通行を制限しない限り、渋滞は当然かもしれません。
道沿いの看板を見ると、ここは現在、道路拡張工事が計画されているとのこと。



さらに進むととたんににぎやかになりました。
川越商店街(クレアモール)です。





空間的にそこまで大きなエリアではないのですが、
商業集積率の高い、にぎやかな商店街です。
特にこのあたりはどうやら若いカップルを中心に、地元の人が行きかっているようです。
東武・JRの川越駅、西武の本川越駅からもほど近く、
両駅のターミナル開発(リブロなどの大手書店やロフト・無印といった商業施設)
とあいまって、一帯は東京のターミナル駅の様子と大差ありません。
郊外の南古谷駅には大きなショッピングモールがありますが、
川越市に関していえば「シャッター街」などの、中心市街地の空洞化問題は
無縁といってよいのかもしれません。



ではあるのですが、その商店街エリアを少し外れると本当に静かな住宅街が広がります。
公園は少ないですが、寺社が多いのでお年寄りはそこで休んでいます。



川越市はそこに集う人の特性を、空間ごとにしっかり分類する戦略が
きちんと立てられている都市といえるのではないでしょうか。
コミュニティの価値を担保し(川越市はこんな街だ!という共同的な幻想)、
観光産業を支えるのは一番街などの歴史地区であり、
30万超の人々の日常を支える消費空間を担うのは商店街や駅前という構図です。
駅から歴史地区にはレトロなバス(小江戸めぐりバス)が直通で出ており、
観光客はそれに乗るにせよ、大型バスに直接乗りつけるにせよ、
商店街のような都市のリアルを視野から排除することができます。



「歴史地区」と銘打っていても、歴史的建造物の保全が十分でなかったり、
区画利用の規制が甘かったりして、「ホントにここが歴史地区なの?」
という街は多いのではないでしょうか。都市のリアルが目に付きすぎるガッカリ感とでも言いましょうか。
その意味で、川越市は歴史的なものを求めてやってくる観光客の夢を壊さない街ともいえます。
それは幻想なのかもしれませんが、その幻想をささえるのはその土地の方々の
熱い想いと明確なビジョン、確かな戦略であることは間違いないでしょう。
その結果、その土地にすむ人々の生活が外部の人間の浸食から守られ、
そこは住みやすい街となるのかもしれません。