【都市探訪】栃木県宇都宮市(その2) 〜地域社会の価値とは〜

【前回までのあらすじ】
宇都宮駅に着き、東口の公共交通について考え、ギョーザを食べました。



宇都宮駅西口です。
有名な「ギョーザ像」を尻目にころして、大通りをずんずん進みます。
中心市街地までは駅から徒歩10〜15分ぐらい、
アーケード街やパルコなどを中心に多くの人で賑わっています。
(※U字工事の言うとおり「都会の香りがする」街です)



そんな街中にあったのが、「二荒山神社」。
「ふたあらさん」と親しまれる宇都宮の総鎮守です。
長い階段をのぼり、ハトの低空飛行での襲撃をかわしつつ、参拝をすませます。
眼下にはオープンスペースと、その左右にある大きなビル2棟。
「宇都宮表参道スクエア」という市の機関が入るオフィスビル
「シティタワー宇都宮」という大手デベロッパーが展開する高層分譲マンションです。




「シティタワー宇都宮」




「ふたあらさん」の周辺は、宇都宮市の再開発の対象になっており、
その結果として2つの高層ビルが建てられたとのこと。
そして、この再開発は行政や政治家、地権者のイニシアチブで進められ、反対運動も起っています。



再開発地にこのようなハコモノや高層マンションが建てられる例は
枚挙に暇がありません。それだけ、行政や地権者にはメリットがある手法なのでしょう。
このケースで特徴的なのは、宇都宮の総鎮守である「ふたあらさん」を、
2つのビルが「見下ろしている」という象徴的な「空間の再編」です。



地域の価値を体現する「鎮守様」が浸食されている。
そのように感じる地元の人から、こうした反対運動が生じるのでしょう。
私たちがコミュニティの価値を考えるとき、その価値は空間的に顕れている。
行政・政治家・企業・住民…これら地域のプレイヤーをめぐる権力関係は
目にみえるものなのかもしれません。



アーケード街に彷徨いこみます。
冷たいものが食べたくなりかき氷を食べに入ったカフェは、
地元商工会議所が運営するアンテナショップ「宮カフェ」でした。



こういったアンテナショップはどちらかというと、垢ぬけない印象がありましたが、
「宮カフェ」は木目調でおしゃれな内装です。
地場の食材を手軽に買えるだけでなく、使ったパスタやスイーツが食べられるということもあり、
店内には女性の姿が目立ちます。
(小太りで汗だくの僕はかえって浮いてました)
また「宮カフェ」では「宮コン」という、市内の飲食店を舞台にした婚活イベントもやっています。
地元で友達を探したり結婚したりしたい人にはいいだろうなあ。



また「宮カフェ」を中心にして、宇都宮市
「住めば愉快だ宇都宮」というブランドメッセージも発信しているそうです。



興味深いのがそのブランドメッセージの策定プロセスです。
その策定メンバーは商工会議所、公募の市民、地元企業、地元メディア、行政から構成されています。
加えて、それぞれの過程でワークショップや講演が展開されたそうです。
「地域の価値」を様々な立場の人が考え、問い直し、再構築する作業といえるでしょう。



今日、世界規模での都市間競争がはげしくなるなか、多くの都市がキャッチフレーズを設定したり、
都市イベント(万博やオリンピックといったメガイベントなどが代表的)を開催したりしています。
しかし、行政が安易に考えたもの(「ゆるキャラなど」)や
広告代理店にまる投げされたものがほとんど、というのが現状でしょう。



「わたしたちはこの街のどんなところを大切にし、語り継いでいくべきのか」
そんな問いは、特定のプレーヤーのみが考え、実現していくものではなく、
地域に関わる全ての人が参画すべきものではないでしょうか。
現在、宇都宮市はこのブランドメッセージのもと、「ジャズ」や「カクテル」の街としても
市民や行政、企業が連携しつつ情報や価値を発信しています。



不和、摩擦、調和、創造。
さまざまな想いが絡み合う複雑さと力強さを宇都宮から感じました。
次回は、福島県へと足を運びます。